CCNA 200-301(v1.1)IP サービス完全ガイド

Cisco CCNA(200-301)試験の「4.0 IP Services(試験全体の10%)」を完全攻略するための解説ページです。インサイドソースNAT(静的・動的プール)、NTP、DHCP・DNSの役割、SNMPの機能、Syslogの重大度レベル、QoS PHBのフォワーディング動作、SSH設定、TFTP/FTPの機能まで、試験トピックの全細目(4.1〜4.9)を初学者にも分かりやすい図解と実機設定例付きで徹底解説します。

このガイドの全体像

CCNA試験における「4.0 IP Services」分野は、出題比率こそ10%ですが、NAT・DHCP・DNS・NTP・SNMP・Syslog・QoS・SSH・TFTP/FTPという、実務で毎日のように触れる「縁の下の力持ち」的な技術が9項目も詰め込まれた、非常に密度の高い分野です。1つ1つは浅く広く問われる傾向があるため、「名前は知っているが動作原理は説明できない」状態を最も避けるべき分野と言えます。

目次

4.1 NAT(静的NATとプールを使った動的NAT)

なぜNATが必要なのか

IPv4アドレスは32ビットしかなく、世界中の全デバイスに一意なグローバルアドレスを割り当てるには数が足りません。そこでRFC 1918で定義されたプライベートIPアドレス(10.0.0.0/8、172.16.0.0/12、192.168.0.0/16)を社内で自由に使い、インターネットに出る際だけグローバルアドレスに変換する仕組みがNAT(Network Address Translation)です。

試験の4.1では、この中でも特にインサイドソースNAT(内部から外部への通信を対象とするNAT)の2種類、静的NATプールを使った動的NATが対象です。

静的NAT(Static NAT)

1つの内部プライベートアドレスと1つの外部グローバルアドレスを、1対1で固定的にマッピングします。社内のWebサーバーなど、外部から常に同じアドレスでアクセスされたい機器に使います。

設定例(IOS)
Router(config)# ip nat inside source static 192.168.1.10 203.0.113.10
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0
Router(config-if)# ip nat inside
Router(config)# interface GigabitEthernet0/1
Router(config-if)# ip nat outside

動的NAT(プールを使用)

複数の内部アドレスに対して、アドレスプール(範囲)の中から空いているグローバルアドレスをその都度割り当てます。1対1の関係はセッションごとに変わりますが、同時に変換できるのはプール内のアドレス数までです。

設定例(IOS)
Router(config)# ip nat pool NAT-POOL 203.0.113.20 203.0.113.29 netmask 255.255.255.0
Router(config)# access-list 1 permit 192.168.1.0 0.0.0.255
Router(config)# ip nat inside source list 1 pool NAT-POOL

NAT方式の比較

方式マッピング関係主な用途特徴
静的NAT1対1(固定)外部公開サーバー(Web/Mailなど)外部からの通信開始が可能
動的NAT(プール)1対1(動的割り当て)一時的な外部アクセス機器プール枯渇時は新規通信不可
PAT(NPTv4/オーバーロード)※参考多対1(ポート番号使用)一般的な社内PCのインターネット接続1つのグローバルIPで多数のPCが同時接続可能
試験のポイント

コマンドの ip nat inside source static [内部] [外部] のパラメータ順序(内部が先、外部が後)と、各インターフェースへの ip nat inside / ip nat outside の指定漏れがないかを問う問題が頻出です。

4.2 NTP(ネットワーク時間プロトコル)

Syslogのタイムスタンプ、証明書の有効期限検証、ログの相関分析など、ネットワーク運用のあらゆる場面で機器間の時刻が揃っていることが前提になります。NTP(Network Time Protocol)はUDP/123を使い、階層構造で正確な時刻を配布します。

Stratum(階層)の考え方

数字が小さいほど「より正確な時刻源に近い」ことを意味します。CCNAでは、ルーターがNTPクライアントにもNTPサーバーにもなれるという点、つまり上位サーバーから時刻を受け取りつつ、下位の機器へ配布できる点を理解しておく必要があります。

設定例
! クライアントモード:上位のNTPサーバーと時刻同期する
Router(config)# ntp server 192.168.1.1
! サーバーモード:自分の時刻を配布する(他機器がこのルーターを参照可能にする)
Router(config)# ntp master 3
検証コマンド
Router# show ntp status
Router# show ntp associations

show ntp statusClock is synchronized という表示で同期状態を確認し、show ntp associations で参照先サーバーとの関係(* が付くものが実際に同期中の相手)を確認します。

試験のポイント

NTPはUDP/123を使用すること、Stratum値が小さいほど信頼度が高いこと、ntp server(クライアント動作)とntp master(サーバー動作)の設定コマンドの違いを押さえましょう。

4.3 DHCP と DNS の役割

DHCPの役割:IPアドレスの自動割り当て

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)は、クライアント端末にIPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイ・DNSサーバーアドレスなどを自動配布するプロトコルです。処理の流れはDORAという頭文字で覚えられます。

  • ① Discover:クライアントがまだIPを持たないため、ブロードキャストでDHCPサーバーを探す
  • ② Offer:サーバーが候補アドレスを提案
  • ③ Request:クライアントが(他のサーバーにも聞こえるよう)ブロードキャストで正式に要求
  • ④ Ack:サーバーが割り当てを確定し、リース情報を通知

DNSの役割:名前解決

DNS(Domain Name System)は、人間が読めるドメイン名(例:www.example.com)を、機器が通信に使うIPアドレスに変換する分散データベースシステムです。

主なDNSレコードタイプ

レコード用途
Aホスト名 → IPv4アドレス
AAAAホスト名 → IPv6アドレス
CNAMEホスト名の別名(エイリアス)
PTRIPアドレス → ホスト名(逆引き)
MXメールサーバーの指定
NSゾーンの権威DNSサーバーの指定
試験のポイント

DHCPの Discover / Request はブロードキャストOffer / Ack はユニキャスト(実装によりブロードキャスト) であること、DNSレコード(A、AAAA、CNAME、PTRなど)の各役割を問う選択問題に対応できるようにしましょう。

4.4 SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)

SNMPの概要とアーキテクチャ

SNMP(Simple Network Management Protocol)は、ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、サーバーなど)の状態(CPU使用率、インターフェースのUp/Down、トラフィック量など)を遠隔から監視・制御するための標準プロトコルです。

3つの重要構成要素

構成要素説明
NMS(SNMPマネージャー)管理用のサーバー・ソフトウェア。エージェントへ情報を要求・受信する
SNMPエージェントネットワーク機器上で動作するプログラム。自機器の情報を収集・提供する
MIB(Management Information Base)機器情報が木構造(ツリー構造)で整理されたデータベース
OID(Object Identifier)MIB内の各データ項目を一意に指す番号(例:1.3.6.1.2.1.1.1

通信の流れ(GET / SET / TRAP)

  • GET/GET-NEXT:マネージャーがエージェントに値を「聞きに行く」(ポーリング)
  • SET:マネージャーがエージェントの設定値を変更する
  • TRAP:エージェント側から自発的に(ポーリングを待たず)異常をマネージャーへ通知する

SNMPバージョンの比較

バージョン認証暗号化特徴
SNMPv1コミュニティ文字列(平文)なし最も古く、セキュリティが弱い
SNMPv2cコミュニティ文字列(平文)なしv1より効率化(GETBULKなど)、セキュリティはv1同様
SNMPv3ユーザーベース認証あり(暗号化可能)認証・暗号化・完全性を提供する現行推奨バージョン
試験のポイント

4.4は「SNMPの機能を説明する(Explain the function)」ため、GET/SET/TRAPの違いと、SNMPv3で初めて暗号化・認証が導入された点を押さえておくと得点しやすいです。

4.5 Syslog(ファシリティと重大度レベル)

Syslogは、ネットワーク機器で発生したイベント(インターフェースダウン、設定変更、エラーなど)を記録・転送するための業界標準の仕組みです。

複数の機器から送られたログを1か所に集約することで、障害発生時の原因調査(時系列相関分析)が格段にやりやすくなります。

重大度レベル(Severity Level)0〜7

数字が小さいほど深刻です。試験で頻出のため、必ず暗記しておきましょう。

レベル名称(英語)意味
0Emergencyシステム使用不能
1Alert直ちに対応が必要
2Critical致命的な状態
3Errorエラー条件
4Warning警告条件
5Notice正常だが重要な状態(例:link UP/DOWN)
6Informational情報メッセージ
7Debuggingデバッグメッセージ(最もしつこく詳細)

記憶用の語呂合わせ例

Every Agent Can Easily Work Now In Darkness」(0〜7の頭文字 E-A-C-E-W-N-I-D)といった英語の語呂合わせがよく使われます。

設定例(IOS)
! SyslogサーバーのIPアドレスを指定
Router(config)# logging host 192.168.1.100
! 転送するログのレベルを指定(レベル4 Warning以上を送る)
Router(config)# logging trap warning
! ログにミリ秒単位の時刻を付与
Router(config)# service timestamps log datetime msec
試験のポイント

0〜7のレベル番号と名称(0=Emergency 〜 7=Debugging)の完全対応、デフォルトでConsole出力されるログレベル、および logging trap コマンドで送るレベルを制限できる点がよく問われます。

4.6 DHCP クライアントとリレーの動作

DHCPクライアント機能

ルーター自身のインターフェース(例:プロバイダからIPを動的取得するWANポート)をDHCPクライアントとして動作させる設定です。

設定例
Router(config)# interface GigabitEthernet0/1
Router(config-if)# ip address dhcp

DHCPリレーが必要な理由

DHCPのDiscoverメッセージはブロードキャストです。ブロードキャストは通常ルーターを越えて転送されないため、DHCPサーバーがクライアントと別のサブネットに存在する場合、そのままでは通信が成立しません。この問題を解決するのがDHCPリレーエージェントです。

設定例

クライアント側のサブネットに接続されたルーターのインターフェースに設定します。

設定例
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0
Router(config-if)# ip helper-address 192.168.99.10

この設定により、ルーターはそのインターフェースで受信したDHCPブロードキャストを、指定したDHCPサーバー宛のユニキャストパケットに変換して転送する「リレーエージェント」として動作します。

試験のポイント

ip helper-addressクライアント側のサブネットに面したインターフェースに設定する点、およびこのコマンドはDHCP以外にも複数のUDPブロードキャストサービス(TFTP、DNSなど)を中継できる点を押さえておきましょう。

4.7 QoS のフォワーディング動作(PHB)

PHB(Per-Hop Behavior)とは

QoS(Quality of Service)は、限られた帯域の中で音声やビデオなど遅延に敏感なトラフィックを優先させる仕組みです。PHB(Per-Hop Behavior:ホップ単位の転送動作)とは、各ネットワーク機器がパケットに付与されたマーキング情報だけを見て、その場でどう扱うかを決める考え方です。

各ステップの意味

ステップ説明
① 分類(Classification)トラフィックを種類ごとに識別する(例:音声、動画、通常データ)
② マーキング(Marking)分類結果をパケットのヘッダーに書き込む(CoS、ToS、DSCPなど)
③ キューイング(Queuing)優先度に応じた複数のキュー(待ち行列)に割り分ける
④ 輻輳管理(Congestion Management)どのキューから優先的にパケットを送り出すかを制御する(例:PQ, CBWFQ, LLQ)
⑤ ポリシング(Policing)規定の帯域を超えたトラフィックを破棄(Drop)する
⑥ シェーピング(Shaping)規定の帯域を超えたトラフィックをバッファに溜めて平滑化(遅延)させて送る

主なPHB分類(DiffServモデル)

PHBクラスDSCP値特徴・用途
EF(Expedited Forwarding)46(101110)最優先処理。低遅延・低ジッター・低損失が保証される(例:VoIP音声データ)
AF(Assured Forwarding)AF11〜AF43帯域保証クラス。4つの優先クラス×3段階の破棄優先度で表現される(例:ビデオ会議、重要ビジネス通信)
DF / CS0(Default / Class Selector 0)0(000000)ベストエフォート。特別な優先処理を行わない通常のIP通信(例:Web閲覧、メール)
試験のポイント

VoIP音声パケット=EF(DSCP 46)であること、ポリシング=超えた分を破棄シェーピング=超えた分を遅延・平滑化 という対比、およびCoS(L2 / 3ビット)とDSCP(L3 / 6ビット)の違いを押さえておくことが重要です。

4.8 SSH によるリモートアクセスの設定と検証

TelnetとSSHの違い

ネットワーク機器のコマンドライン操作を行う際、従来のTelnet(TCP/23)はユーザー名やパスワードを含む全てのデータを平文(暗号化なし)で送信するため盗聴に脆弱です。これに対し、SSH(Secure Shell、TCP/22)は通信内容を暗号化するため、現在の実務およびCCNA試験ではSSHの利用が前提とされています。

SSH設定の手順

設定例(IOS)
! ① ホスト名とドメイン名を設定(RSA鍵生成の前提条件)
Router(config)# hostname R1
R1(config)# ip domain-name example.local
! ② RSA鍵ペアを生成
R1(config)# crypto key generate rsa
! (鍵長を聞かれたら 2048 などを入力)
! ③ ローカル認証用のユーザーを作成
R1(config)# username admin privilege 15 secret StrongPass123
! ④ VTYラインでSSHのみを許可し、ローカル認証を使う
R1(config)# line vty 0 15
R1(config-line)# transport input ssh
R1(config-line)# login local

検証コマンド

検証コマンド
R1# show ip ssh
R1# show ssh

show ip ssh でSSHのバージョン(SSHv1/v2)や有効状態を、show ssh で現在接続中のSSHセッション一覧を確認できます。

試験のポイント

SSH設定には「ホスト名+ドメイン名の設定」「RSA鍵の生成」「ローカルユーザーの作成」「VTYラインでの transport input ssh 設定」という4ステップの順序が問われやすいポイントです。鍵生成前にホスト名・ドメイン名の設定が必須である点を忘れずに。

4.9 TFTP/FTP の機能

ルーターやスイッチのIOSイメージ・設定ファイルのバックアップ/復元では、汎用的なファイル転送プロトコルであるTFTPやFTPがよく使われます。

TFTPとFTPの比較

項目TFTPFTP
使用トランスポートUDP/69TCP/20(データ)・21(制御)
認証なし(認証機能を持たない)あり(ユーザー名・パスワード)
信頼性UDP上でACK・タイムアウト再送を行うが、停止待ち方式で機能が限定的高い(コネクション指向)
主な用途IOSイメージ・設定ファイルの簡易バックアップ/復元より高機能なファイル転送、認証が必要な用途
特徴シンプルで軽量、社内の信頼できるネットワークで利用ディレクトリ操作やアクセス制御が可能

典型的な利用シーン

設定例(IOSでの実行コマンド)

設定例
! 現在の設定をTFTPサーバーにバックアップ
Router# copy running-config tftp
Address or name of remote host []? 192.168.1.50
Destination filename [running-config]?
! TFTPサーバーからIOSイメージをルーターのflashへ復元
Router# copy tftp flash
試験のポイント

4.9は「機能と役割を説明できるか(Describe the capabilities and functions)」が問われる項目です。TFTPは認証なし・UDP、FTPは認証あり・TCPという対比、およびIOSイメージや設定ファイルのバックアップ/復元という代表的な用途を押さえておきましょう。

学習のポイントまとめ

IP Servicesは9つの項目がありますが、それぞれの「土台となる問い」に立ち返ると整理しやすくなります。

技術目細一言でまとめると?絶対覚える暗記キーワード
4.1 NATプライベート⇔グローバル変換静的(1:1固定)/ 動的(プール)/ PAT(ポート番号)
4.2 NTP時刻の正確な同期UDP/123、Stratum(小さいほど高精度)、ntp master/server
4.3 DHCP/DNSIP自動配分 & 名前解決DHCP DORA(Discover=BC)、DNS A/AAAA/CNAME/PTR/MX/NS
4.4 SNMP機器の状態監視・制御NMS/Agent/MIB/OID、GET/SET/TRAP、v3で暗号化・認証
4.5 Syslog集中ログ記録UDP/514、レベル0(Emergency)〜7(Debugging)
4.6 DHCPリレーサブネット越えのDHCP中継ip helper-address(クライアント側IFに設定、BC→UC変換)
4.7 QoS PHBトラフィックの優先度制御VoIP=EF(DSCP 46)、ポリシング(破棄)vs シェーピング(遅延)
4.8 SSH暗号化されたリモート管理ホスト名→ドメイン名→鍵生成→VTY設定の順
4.9 TFTP/FTPファイル転送・バックアップTFTP=UDP/認証なし、FTP=TCP/認証あり

学習の進め方としては、まず各項目の「①なぜ必要か」「②どう動くか(図で流れを追う)」「③試験で問われやすい対比表」の3ステップで理解し、その後で実機またはPacket Tracer/CMLなどのシミュレータ上で実際にコマンドを打って検証コマンド(showコマンド)の出力まで確認すると定着しやすくなります。