CCNA 200-301 STUDY GUIDE

CCNA 200-301 徹底解説
IP Connectivity(IP接続性)編

CCNA 200-301試験は6つのドメインで構成されており、そのうち「IP Connectivity」は単独で最も出題比率が高い分野(25%)です。ルーティングの基礎を理解していないと、この後に学ぶIP ServicesやSecurity Fundamentalsの理解も浅くなってしまうため、CCNA学習の中核と言える範囲です。

0. このガイドの全体像

このガイドでは、公式試験ブループリント(v1.1)の「3.0 IP Connectivity」に定義された以下の5つのサブトピックを、初学者向けに順番通り・図解付きで解説します。

番号サブトピック本ガイドの章
3.1ルーティングテーブルの構成要素を解釈する第1章
3.2ルータがデフォルトでフォワーディング決定を行う仕組みを判断する第2章
3.3IPv4/IPv6スタティックルーティングの設定と検証第3章
3.4シングルエリアOSPFv2の設定と検証第4章
3.5ファーストホップ冗長プロトコル(FHRP)の目的を説明する第5章

第1章|3.1 ルーティングテーブルの構成要素を解釈する

1-1. ルーティングテーブルとは何か

ルーティングテーブルは、ルータがパケットを受信した際に「どの送信先に届けるために、どのインターフェースから送り出すべきか」を記した「地図(ナビゲーション)」です。

Cisco IOSで show ip route コマンドを実行すると表示されます。

! show ip route の出力例
Codes: C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP
D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
Gateway of last resort is 192.168.1.1 to network 0.0.0.0
C 192.168.10.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L 192.168.10.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
S 10.1.0.0/16 [1/0] via 192.168.1.2
O 172.16.0.0/16 [110/20] via 192.168.1.3, 00:12:45, GigabitEthernet0/1
S* 0.0.0.0/0 [1/0] via 192.168.1.1

1-2. 各構成要素の意味(試験で問われるポイント)

構成要素表示例解説
ルーティングプロトコルコードC, L, S, O, D経路情報をどのように学習したかを示します。
C: 直接接続(Connected)
L: ローカルIP(自分自身のIPアドレス/32)
S: スタティックルート(静的設定)
O: OSPF
D: EIGRP
プレフィックス(ネットワークID)10.1.0.0/16宛先ネットワークの範囲とサブネットマスク長。
アドミニストレーティブディスタンス(AD)[110/20]110経路情報の信頼度(数字が小さいほど信頼性が高く優先される)。
メトリック(Metric)[110/20]20同じプロトコル内での経路の「コスト(距離・遅延など)」。数字が小さいほど良い経路。
ネクストホップ(Next Hop)via 192.168.1.3次にパケットを渡すべき隣接ルータのIPアドレス。
出力インターフェースGigabitEthernet0/1パケットを送り出す自ルータのポート名。
ゲートウェイ・オブ・ラストリゾート0.0.0.0/0ルーティングテーブルに該当する個別経路がない場合に使うデフォルトルート。
💡 初学者がつまずきやすいポイント
[110/20] のような表記は「[AD/メトリック]」の順番で書かれています。AD(信頼度)が先、メトリック(コスト)が後です。試験ではこの順番を逆にしてひっかける問題が出題されるため、「AD → メトリック」の順を確実に暗記しましょう。

1-3. パケット転送の流れ(全体イメージ)

第2章|3.2 ルータのフォワーディング決定ロジック

同じ宛先に対して複数の経路情報がある場合、ルータは以下の3段階の優先順位で「どの経路を実際に使うか」を決定します。これが試験トピック3.2の核心です。

2-1. ①最長プレフィックスマッチ(Longest Prefix Match)

最も優先されるルール。宛先IPアドレスに対して、より長い(より詳細な=ホスト数が少ない)プレフィックスを持つ経路が常に優先されます。

例:宛先 10.10.20.5 へのパケットがある場合

候補経路プレフィックス長採用される?
10.0.0.0/8/8(大まかな範囲)❌ 不採用
10.10.0.0/16/16❌ 不採用
10.10.20.0/24/24(最も詳細)採用

→ プレフィックス長が異なる場合は、ADやメトリックを比較するまでもなく、最長一致が常に勝ちます。

2-2. ②アドミニストレーティブディスタンス(AD)

プレフィックス長が同じ経路が複数の情報源(プロトコル)から学習された場合に比較される「情報源の信頼度」です。値が小さいほど信頼性が高く、優先されます。

経路種別 / プロトコルデフォルトAD値覚え方のコツ・試験対策
直接接続(Connected)0最強。物理的に繋がっているため最も信頼
ローカル(Local)0自分自身のIPアドレス(/32)
スタティックルート(Static)1手動設定なので極めて高い信頼度
eBGP(外部BGP)20組織間ルーティング
EIGRP(内部)90Cisco独自の高機能プロトコル
OSPF110試験最頻出!必ず覚える
IS-IS115大規模キャリア向け
RIP120古いプロトコルで信頼度が低い
iBGP(内部BGP)200組織内BGP
未知 / 受信拒否(Unreachable)255ルーティングテーブルに載せない

2-3. ③メトリック

プレフィックス長もAD値も同じ場合(=同じルーティングプロトコル内で複数経路がある場合)に比較されます。値が小さいほど低コスト(良い経路)です。

  • OSPFのメトリック: コスト(Cost = 100Mbps / インターフェース帯域幅)
  • RIPのメトリック: ホップ数(Hop Count = 通過するルータの数)
  • EIGRPのメトリック: 帯域幅(Bandwidth)と遅延(Delay)から算出される複合メトリック

第3章|3.3 IPv4/IPv6スタティックルーティングの設定・検証

3-1. スタティックルートの4分類

スタティックルートは設定用途によって4つのパターンに分類され、試験でもそれぞれの特徴・設定方法が問われます。

種類概要IPv4設定例
標準スタティックルート特定の宛先サブネットへの経路を指定する最も一般的な設定ip route 10.1.0.0 255.255.0.0 192.168.1.2
デフォルトスタティックルート0.0.0.0/0 を指定し、ルーティングテーブルにない全宛先のパケットを転送ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1
ホストルート特定1台のホスト(/32 または /128)へのピンポイント経路ip route 10.1.1.50 255.255.255.255 192.168.1.2
フローティングスタティックルートデフォルトより大きいAD値を設定し、プライマリ経路ダウン時のみ有効化するバックアップ経路ip route 10.1.0.0 255.255.0.0 192.168.2.2 200

3-2. 構成例(トポロジ)

以下は、R1がR2(プライマリ)とR3(バックアップ)の2経路でネットワーク 10.10.20.0/24 に到達できる構成です。

3-3. IOS設定例

! プライマリ経路(デフォルトのAD=1)
R1(config)# ip route 10.10.20.0 255.255.255.0 192.168.1.2
! フローティングスタティック(バックアップ経路。AD=200に設定し優先度を下げる)
R1(config)# ip route 10.10.20.0 255.255.255.0 192.168.10.2 200
! IPv6スタティックルート(IPv4と考え方は同じ)
R1(config)# ipv6 route 2001:db8:20::/64 2001:db8:1::2

R2経由の経路(AD=1)が生きている限り、ルーティングテーブルにはR2経由の経路のみが載ります。R2経由の経路が消えた(リンクダウンした)場合にのみ、AD=200のR3経由の経路がルーティングテーブルに現れ、通信が自動的に切り替わります。これが「フローティング(浮動)」と呼ばれる理由です。

3-4. 検証コマンド

コマンド用途
show ip routeIPv4ルーティングテーブル全体を確認
show ip route staticスタティックルートのみを絞り込んで確認
show ipv6 routeIPv6ルーティングテーブルを確認
ping / traceroute実際の到達性を確認

第4章|3.4 シングルエリアOSPFv2の設定・検証

4-1. OSPFの基本動作

OSPF(Open Shortest Path First)はリンクステート型のルーティングプロトコルです。ルータ同士が「隣接関係(アジェセンシー)」を確立し、リンク状態情報(LSA)を交換し合うことで、ネットワーク全体のトポロジを学習し、最短経路を計算します。

4-2. ネイバー隣接関係(Neighbor Adjacency)の確立ステート

2台のOSPFルータが隣接関係を確立するまでには、以下のステートを順番に遷移します。

ステート状態の意味
Down隣接ルータからHelloパケットを受信していない初期状態
InitHelloパケットを受信したが、相手のHelloに自分のRouter IDがまだ含まれていない
2-Way双方向の疎通を確認(マルチアクセス網ではDR/BDR選出がこの時点で行われる)
ExStartDBD交換のためのマスター/スレーブ関係を決定
ExchangeDBD(データベース記述パケット)を交換し、互いが持つLSAの一覧を確認
Loading不足しているLSAの詳細をLSR/LSUでやり取り
FullLSDBが完全に同期し、隣接関係が確立完了

4-3. ネットワークタイプ:ポイントツーポイント vs ブロードキャスト

ネットワークタイプ代表例DR/BDR選出
ポイントツーポイントシリアル回線、ルータ間の直接リンク不要(2台のみのため)
ブロードキャストEthernetセグメント(マルチアクセス)必要(DR/BDRを選出)

ブロードキャスト型のマルチアクセスネットワーク(例:同一Ethernetセグメントに3台以上のルータ)では、全ルータ同士がフルメッシュで隣接関係を結ぶと非効率(LSA交換の組み合わせ爆発)になるため、代表ルータ(DR)とバックアップ(BDR)を選出し、他のルータはDR/BDRとのみフル隣接関係を結びます。

4-4. DR/BDR選出ロジック

💡 Router IDの決定順序(重要)
  1. router-id コマンドで明示的に設定された値(最優先)
  2. ループバックインターフェースの中で最も高いIPアドレス
  3. 物理インターフェースの中で最も高いIPアドレス(ループバックが無い場合)

4-5. 設定例

R1(config)# router ospf 1
R1(config-router)# router-id 1.1.1.1
R1(config-router)# network 192.168.1.0 0.0.0.255 area 0
R1(config-router)# network 10.10.20.0 0.0.0.255 area 0

「シングルエリア」という名前の通り、CCNAで問われるOSPFはすべてarea 0(バックボーンエリア)のみで構成されるシンプルな構成です。

4-6. 検証コマンド

コマンド確認できる内容
show ip ospf neighbor隣接関係のステート(Fullになっているか)
show ip protocols有効なルーティングプロトコルの設定概要
show ip ospf interfaceインターフェースごとのOSPF設定・DR/BDR情報

第5章|3.5 ファーストホップ冗長プロトコル(FHRP)

5-1. なぜFHRPが必要か

一般的なホスト(PC等)は、デフォルトゲートウェイとして1つのIPアドレスしか設定できません。もしそのデフォルトゲートウェイ(ルータ)が故障すると、そのセグメントは外部と通信できなくなってしまいます。

FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、複数の物理ルータで1つの仮想IPアドレス(仮想ゲートウェイ)を共有することで、1台が故障してももう1台が自動的に処理を引き継ぐ仕組みです。

5-2. 代表的なFHRPの比較

プロトコル種別特徴
HSRP(Hot Standby Router Protocol)Cisco独自ActiveとStandbyの2台構成。最も出題率が高い。
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)標準規格(IETF)MasterとBackup構成。マルチベンダーで利用可能。
GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)Cisco独自複数ルータで同時にロードバランシング(負荷分散)が可能。

まとめ:学習の進め方

CCNAのIP Connectivity分野は、単なる暗記ではなく「ルータの思考プロセス(ロジック)」を理解することが鍵です。

  • 最長一致 → AD → メトリック の順序を叩き込む
  • 主要プロトコルのAD値(Connected=0, Static=1, OSPF=110, RIP=120)を即答できるようにする
  • show ip route show ip ospf neighbor の出力結果を正しく読み解く練習をする

参考ソース(出典)

  • Cisco Official Exam Topics: CCNA 200-301 v1.1 Blueprint
  • Cisco Press: CCNA 200-301 Official Cert Guide, Volume 1 & 2