0. このガイドの全体像
このガイドでは、公式試験ブループリント(v1.1)の「3.0 IP Connectivity」に定義された以下の5つのサブトピックを、初学者向けに順番通り・図解付きで解説します。
| 番号 | サブトピック | 本ガイドの章 |
|---|---|---|
| 3.1 | ルーティングテーブルの構成要素を解釈する | 第1章 |
| 3.2 | ルータがデフォルトでフォワーディング決定を行う仕組みを判断する | 第2章 |
| 3.3 | IPv4/IPv6スタティックルーティングの設定と検証 | 第3章 |
| 3.4 | シングルエリアOSPFv2の設定と検証 | 第4章 |
| 3.5 | ファーストホップ冗長プロトコル(FHRP)の目的を説明する | 第5章 |
第1章|3.1 ルーティングテーブルの構成要素を解釈する
1-1. ルーティングテーブルとは何か
ルーティングテーブルは、ルータがパケットを受信した際に「どの送信先に届けるために、どのインターフェースから送り出すべきか」を記した「地図(ナビゲーション)」です。
Cisco IOSで show ip route コマンドを実行すると表示されます。
1-2. 各構成要素の意味(試験で問われるポイント)
| 構成要素 | 表示例 | 解説 |
|---|---|---|
| ルーティングプロトコルコード | C, L, S, O, D | 経路情報をどのように学習したかを示します。C: 直接接続(Connected)L: ローカルIP(自分自身のIPアドレス/32)S: スタティックルート(静的設定)O: OSPFD: EIGRP |
| プレフィックス(ネットワークID) | 10.1.0.0/16 | 宛先ネットワークの範囲とサブネットマスク長。 |
| アドミニストレーティブディスタンス(AD) | [110/20] の 110 | 経路情報の信頼度(数字が小さいほど信頼性が高く優先される)。 |
| メトリック(Metric) | [110/20] の 20 | 同じプロトコル内での経路の「コスト(距離・遅延など)」。数字が小さいほど良い経路。 |
| ネクストホップ(Next Hop) | via 192.168.1.3 | 次にパケットを渡すべき隣接ルータのIPアドレス。 |
| 出力インターフェース | GigabitEthernet0/1 | パケットを送り出す自ルータのポート名。 |
| ゲートウェイ・オブ・ラストリゾート | 0.0.0.0/0 | ルーティングテーブルに該当する個別経路がない場合に使うデフォルトルート。 |
[110/20] のような表記は「[AD/メトリック]」の順番で書かれています。AD(信頼度)が先、メトリック(コスト)が後です。試験ではこの順番を逆にしてひっかける問題が出題されるため、「AD → メトリック」の順を確実に暗記しましょう。1-3. パケット転送の流れ(全体イメージ)
第2章|3.2 ルータのフォワーディング決定ロジック
同じ宛先に対して複数の経路情報がある場合、ルータは以下の3段階の優先順位で「どの経路を実際に使うか」を決定します。これが試験トピック3.2の核心です。
2-1. ①最長プレフィックスマッチ(Longest Prefix Match)
最も優先されるルール。宛先IPアドレスに対して、より長い(より詳細な=ホスト数が少ない)プレフィックスを持つ経路が常に優先されます。
例:宛先 10.10.20.5 へのパケットがある場合
| 候補経路 | プレフィックス長 | 採用される? |
|---|---|---|
10.0.0.0/8 | /8(大まかな範囲) | ❌ 不採用 |
10.10.0.0/16 | /16 | ❌ 不採用 |
10.10.20.0/24 | /24(最も詳細) | ✅ 採用 |
→ プレフィックス長が異なる場合は、ADやメトリックを比較するまでもなく、最長一致が常に勝ちます。
2-2. ②アドミニストレーティブディスタンス(AD)
プレフィックス長が同じ経路が複数の情報源(プロトコル)から学習された場合に比較される「情報源の信頼度」です。値が小さいほど信頼性が高く、優先されます。
| 経路種別 / プロトコル | デフォルトAD値 | 覚え方のコツ・試験対策 |
|---|---|---|
| 直接接続(Connected) | 0 | 最強。物理的に繋がっているため最も信頼 |
| ローカル(Local) | 0 | 自分自身のIPアドレス(/32) |
| スタティックルート(Static) | 1 | 手動設定なので極めて高い信頼度 |
| eBGP(外部BGP) | 20 | 組織間ルーティング |
| EIGRP(内部) | 90 | Cisco独自の高機能プロトコル |
| OSPF | 110 | 試験最頻出!必ず覚える |
| IS-IS | 115 | 大規模キャリア向け |
| RIP | 120 | 古いプロトコルで信頼度が低い |
| iBGP(内部BGP) | 200 | 組織内BGP |
| 未知 / 受信拒否(Unreachable) | 255 | ルーティングテーブルに載せない |
2-3. ③メトリック
プレフィックス長もAD値も同じ場合(=同じルーティングプロトコル内で複数経路がある場合)に比較されます。値が小さいほど低コスト(良い経路)です。
- OSPFのメトリック: コスト(Cost = 100Mbps / インターフェース帯域幅)
- RIPのメトリック: ホップ数(Hop Count = 通過するルータの数)
- EIGRPのメトリック: 帯域幅(Bandwidth)と遅延(Delay)から算出される複合メトリック
第3章|3.3 IPv4/IPv6スタティックルーティングの設定・検証
3-1. スタティックルートの4分類
スタティックルートは設定用途によって4つのパターンに分類され、試験でもそれぞれの特徴・設定方法が問われます。
| 種類 | 概要 | IPv4設定例 |
|---|---|---|
| 標準スタティックルート | 特定の宛先サブネットへの経路を指定する最も一般的な設定 | ip route 10.1.0.0 255.255.0.0 192.168.1.2 |
| デフォルトスタティックルート | 0.0.0.0/0 を指定し、ルーティングテーブルにない全宛先のパケットを転送 | ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 |
| ホストルート | 特定1台のホスト(/32 または /128)へのピンポイント経路 | ip route 10.1.1.50 255.255.255.255 192.168.1.2 |
| フローティングスタティックルート | デフォルトより大きいAD値を設定し、プライマリ経路ダウン時のみ有効化するバックアップ経路 | ip route 10.1.0.0 255.255.0.0 192.168.2.2 200 |
3-2. 構成例(トポロジ)
以下は、R1がR2(プライマリ)とR3(バックアップ)の2経路でネットワーク 10.10.20.0/24 に到達できる構成です。
3-3. IOS設定例
R2経由の経路(AD=1)が生きている限り、ルーティングテーブルにはR2経由の経路のみが載ります。R2経由の経路が消えた(リンクダウンした)場合にのみ、AD=200のR3経由の経路がルーティングテーブルに現れ、通信が自動的に切り替わります。これが「フローティング(浮動)」と呼ばれる理由です。
3-4. 検証コマンド
| コマンド | 用途 |
|---|---|
show ip route | IPv4ルーティングテーブル全体を確認 |
show ip route static | スタティックルートのみを絞り込んで確認 |
show ipv6 route | IPv6ルーティングテーブルを確認 |
ping / traceroute | 実際の到達性を確認 |
第4章|3.4 シングルエリアOSPFv2の設定・検証
4-1. OSPFの基本動作
OSPF(Open Shortest Path First)はリンクステート型のルーティングプロトコルです。ルータ同士が「隣接関係(アジェセンシー)」を確立し、リンク状態情報(LSA)を交換し合うことで、ネットワーク全体のトポロジを学習し、最短経路を計算します。
4-2. ネイバー隣接関係(Neighbor Adjacency)の確立ステート
2台のOSPFルータが隣接関係を確立するまでには、以下のステートを順番に遷移します。
| ステート | 状態の意味 |
|---|---|
| Down | 隣接ルータからHelloパケットを受信していない初期状態 |
| Init | Helloパケットを受信したが、相手のHelloに自分のRouter IDがまだ含まれていない |
| 2-Way | 双方向の疎通を確認(マルチアクセス網ではDR/BDR選出がこの時点で行われる) |
| ExStart | DBD交換のためのマスター/スレーブ関係を決定 |
| Exchange | DBD(データベース記述パケット)を交換し、互いが持つLSAの一覧を確認 |
| Loading | 不足しているLSAの詳細をLSR/LSUでやり取り |
| Full | LSDBが完全に同期し、隣接関係が確立完了 |
4-3. ネットワークタイプ:ポイントツーポイント vs ブロードキャスト
| ネットワークタイプ | 代表例 | DR/BDR選出 |
|---|---|---|
| ポイントツーポイント | シリアル回線、ルータ間の直接リンク | 不要(2台のみのため) |
| ブロードキャスト | Ethernetセグメント(マルチアクセス) | 必要(DR/BDRを選出) |
ブロードキャスト型のマルチアクセスネットワーク(例:同一Ethernetセグメントに3台以上のルータ)では、全ルータ同士がフルメッシュで隣接関係を結ぶと非効率(LSA交換の組み合わせ爆発)になるため、代表ルータ(DR)とバックアップ(BDR)を選出し、他のルータはDR/BDRとのみフル隣接関係を結びます。
4-4. DR/BDR選出ロジック
router-idコマンドで明示的に設定された値(最優先)- ループバックインターフェースの中で最も高いIPアドレス
- 物理インターフェースの中で最も高いIPアドレス(ループバックが無い場合)
4-5. 設定例
「シングルエリア」という名前の通り、CCNAで問われるOSPFはすべてarea 0(バックボーンエリア)のみで構成されるシンプルな構成です。
4-6. 検証コマンド
| コマンド | 確認できる内容 |
|---|---|
show ip ospf neighbor | 隣接関係のステート(Fullになっているか) |
show ip protocols | 有効なルーティングプロトコルの設定概要 |
show ip ospf interface | インターフェースごとのOSPF設定・DR/BDR情報 |
第5章|3.5 ファーストホップ冗長プロトコル(FHRP)
5-1. なぜFHRPが必要か
一般的なホスト(PC等)は、デフォルトゲートウェイとして1つのIPアドレスしか設定できません。もしそのデフォルトゲートウェイ(ルータ)が故障すると、そのセグメントは外部と通信できなくなってしまいます。
FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、複数の物理ルータで1つの仮想IPアドレス(仮想ゲートウェイ)を共有することで、1台が故障してももう1台が自動的に処理を引き継ぐ仕組みです。
5-2. 代表的なFHRPの比較
| プロトコル | 種別 | 特徴 |
|---|---|---|
| HSRP(Hot Standby Router Protocol) | Cisco独自 | ActiveとStandbyの2台構成。最も出題率が高い。 |
| VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol) | 標準規格(IETF) | MasterとBackup構成。マルチベンダーで利用可能。 |
| GLBP(Gateway Load Balancing Protocol) | Cisco独自 | 複数ルータで同時にロードバランシング(負荷分散)が可能。 |
まとめ:学習の進め方
CCNAのIP Connectivity分野は、単なる暗記ではなく「ルータの思考プロセス(ロジック)」を理解することが鍵です。
- 最長一致 → AD → メトリック の順序を叩き込む
- 主要プロトコルのAD値(Connected=0, Static=1, OSPF=110, RIP=120)を即答できるようにする
show ip routeやshow ip ospf neighborの出力結果を正しく読み解く練習をする
参考ソース(出典)
- Cisco Official Exam Topics: CCNA 200-301 v1.1 Blueprint
- Cisco Press: CCNA 200-301 Official Cert Guide, Volume 1 & 2